映画『シンシン アンド ザ マウス』とは?あらすじ・キャスト・見どころをネタバレ解説【岸井ゆきの×ツェン・ジンホア】

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2026年6月26日(金)より、新宿バルト9、シネスイッチ銀座ほか全国で公開される映画『シンシン アンド ザ マウス/SINSIN AND THE MOUSE』。吉本ばななさんの短編小説を、日本と台湾の合作で映画化したヒューマンドラマです。岸井ゆきのさんと台湾の人気俳優ツェン・ジンホアさんがダブル主演を務め、母を亡くした女性が台北で再生していく姿を、静かに、そしてあたたかく描き出します。この記事では、作品概要・ストーリー・キャスト・見どころを、ネタバレも交えてたっぷりご紹介していきます。

作品の基本情報

原作は、吉本ばななさんの短編小説集『ミトンとふびん』(新潮社/幻冬舎文庫)に収められた一篇「SINSIN AND THE MOUSE」です。この短編集は第58回谷崎潤一郎賞を受賞した一冊で、台北、ヘルシンキ、ローマなど、さまざまな土地を旅する女性たちの喪失と再生を描いた全6編からなります。

監督・脚本・編集を務めるのは、『ボクは坊さん。』『すくってごらん』の真壁幸紀さん。共同脚本は加藤法子さんです。本作は台湾の金馬映画祭「Film Project Promotion(FPP)」部門の優秀企画に選出され、日台合作として映画化が実現しました。上映時間は108分、映倫区分はG。スコットランドで開催された第22回グラスゴー映画祭ではワールドプレミア上映され、現地の観客からも高い評価を受けています。

ストーリー(あらすじ)

最愛の母を亡くし、心にぽっかりと空いた穴を埋められないまま、ちづみは日々を過ごしていました。時間だけが過ぎていくなか、友人に誘われて台湾を訪れた彼女は、台湾人の母と日本人の父を持つ青年・シンシンと出会います。

見知らぬ台北の風景、屋台のにおい、何気ない会話の積み重ね。そのひとつひとつが、止まっていたちづみの時間を少しずつ動かしていきます。消えない悲しみを抱えながらも、彼女は小さなぬくもりを見つけていく――。大きな事件が起こるわけではありません。けれども、人が誰かと出会い、もう一度生きはじめる瞬間の繊細な揺らぎが、丁寧にすくい上げられた物語です。

キャスト

主人公・ちづみを演じるのは、『ケイコ 目を澄ませて』『愛がなんだ』で知られる岸井ゆきのさん。喪失のなかで揺れる心を、表情の細やかな変化で表現します。

ちづみが台北で出会う青年・シンシンを演じるのは、『返校 言葉が消えた日』『君の心に刻んだ名前』などで人気を集める台湾の若手俳優ツェン・ジンホアさん。本作で初めて日本語の演技に挑戦しました。

共演には、藤原季節さん、中田青渚さん、柄本時生さん、伊勢佳世さん、飯田基祐さん、そしてベテランの余貴美子さんら実力派が顔をそろえます。台湾サイドからもリン・チェンシーさん、エンジェル・リーさん、リン・メイジェンさんが出演。なお、主題歌「Let Me Feel You」は藤原季節さんが“マサミチ”名義で歌っています。

見どころ

最大の見どころは、岸井ゆきのさんとツェン・ジンホアさんが醸し出す、ことばを超えた距離感です。日本語と中国語、文化も背景も異なるふたりが、たどたどしくも心を通わせていく過程が、台北の街の光や音とともに丁寧に描かれます。

公式サイトに寄せられたコメントでは、ちづみ役の岸井さんの美しさと、恋に落ちていくときの独特の集中力、そして「音」が重要な要素であることが指摘されています。サウンドプロデューサーにTAKU Tanakaさんを迎えた繊細な音響設計も、本作の没入感を支える大きな魅力といえるでしょう。

【ネタバレあり】タイトルに隠された“ねずみ”の意味

ここからはネタバレを含みます。原作の内容にも触れますので、まっさらな状態で観たい方はご注意ください。

タイトルの「マウス(ねずみ)」には、本作の核心となる意味が込められています。シンシンは幼い頃、母親が家にいない夜が多く、天井裏を走るねずみの音に癒やされていました。彼にとってねずみは“想像上の友だち”であり、「動きのある生き物が家でいっしょに暮らしている」という事実そのものが、孤独な少年を支えていたのです。愛を、人格や血縁にまで頼らず、「動きのある生き物とのつながり」にまで切り詰めた――そんな独特の感覚が物語の底に流れています。

そしてシンシンは、「小さくて」「子ねずみみたいだから」という理由でちづみを好きになります。“ちづみ”と“ねずみ”、その響きの近さが、ふたりの関係をやさしく結びつけていくのです。一方のちづみは、母を看取ったばかりの心細さのなかで、「いのししが襲ってきても倒してくれそう」なシンシンの肩幅の広さに惹かれていきます。大きなものが小さなものを愛し、小さなものが大きなものを愛する。その単純であたたかな「好き」が、彼女を再生へと導いていきます。

物語のなかで効いてくるのが、劇中絵本「ないしょのおともだち」(ビバリー・ドノフリオ文/バーバラ・マクリントック絵/福本友美子訳)の存在です。秘密の友だちであるねずみとの交流を描いたこの絵本が、シンシンの記憶やふたりの関係と静かに重なり合い、観る者の胸にじんわりと染みていきます。劇的な結末ではなく、悲しみを抱えたまま「それでも大丈夫」と思える地点へとたどり着く――そんな余韻こそが、この映画のいちばんの贈りものなのです。

まとめ

『シンシン アンド ザ マウス/SINSIN AND THE MOUSE』は、喪失の痛みを抱えた人が、異国の地で小さなぬくもりを見つけ、もう一度生きはじめる物語です。派手さはありませんが、観終えたあとにそっと背中を押してくれる、ちいさくてあたたかい一本。吉本ばななさんの世界観が好きな方はもちろん、静かな余韻の残る映画を求めている方にこそ、おすすめしたい作品です。2026年6月26日の公開を、ぜひ劇場でお楽しみください。

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