作品概要(どんな漫画?)
主人公は、SNSでは鍵垢でしか本音が言えない女性・みなみ。街での理不尽や、恋愛での雑な扱い、そして「女」という役割の押し付けにすり減りながらも、“痛くない人間関係(=無痛)”を求めて生き延びようとします。連載はWeb漫画サイト「&Sofa」系統で展開され、公式の作品紹介でも「痛みのない人間関係は築けるのか?」という問いが前面に出ています。
作者は『臨死!! 江古田ちゃん』などで知られる瀧波ユカリ。
あらすじ(ネタバレなし)

みなみは、顔がよくて魅力的だけど、他人を雑に扱う“星屑男子”に振り回されがち。日常でも、女性であるがゆえの不快な出来事(ぶつかり男、空気の押し付け、ハラスメント的な場面)に遭遇し、心の逃げ場は鍵垢だけ──という状態です。
そんなみなみの前に現れるのが、女性との距離感や言葉選びに自覚的な年上男性、通称“フェミおじさん”。彼との出会いをきっかけに、みなみは「痛みを減らしながら関係を築く」ことに向き合い始めます。
さらに物語は恋愛だけに閉じず、「背負いすぎ」「ラブホ割り勘」「セクハラ的状況」など、いまの生活者がぶつかりやすいトピックを拾いながら進みます。
主な登場人物(ざっくり)
みなみ:鍵垢でしか本音が言えない。“痛くない恋愛”を夢見るが現実はしんどい
由仁(女友達):みなみに言語や視点を与える存在(「それは痛い」「それはおかしい」を整理する役)
星屑男子(千歳):魅力はあるが、相手を消耗させるタイプとして描かれがち
フェミおじさん(月寒さん):配慮や学びを実装しようとする年上男性として登場
【ネタバレ】ざっくり展開まとめ(主要ポイントだけ)
※ここから先は、単行本の公式紹介文などで明示されている範囲を軸に、大筋だけまとめます。
1)「無痛恋愛」への憧れと、現実の“痛み”
みなみは「苦しくない関係」を求めつつも、星屑男子との関係や日常の摩耗で、怒りや違和感を飲み込む癖が強い。物語は、そこで終わらず、“痛みをなかったことにしない”方向へ舵を切っていきます。
2)うずらちゃん編(結婚・出産後の地獄と、やり直しの選択)
友人(インフルエンサー的存在)として描かれる「うずらちゃん」は、結婚後に夫からのDVに苦しみ、関係の再構築・再定義へ向かう決断が描かれます(公式あらすじでDVや選択が明記)。
3)みなみの“清算”と、「怒り」を取り戻す展開
中盤以降、みなみは「怒り」を取り戻し、星屑男子との関係を清算する流れが語られます。ここがタイトルの“無痛”に対する、作者なりの回答の一つになっている印象です。
4)さらに広がる社会テーマ(独身偽装・生理・呪い など)
巻が進むほど、恋愛の話から「制度・慣習・家族・身体」の話へ広がっていきます。たとえば、独身偽装や、女性が「生理」と言いづらい空気、家庭内の扱いの差のようなテーマが、人物の人生に結びつけて扱われます。
読後レビュー(刺さる点/好みが分かれる点)
刺さる点
“恋愛漫画”なのに、恋愛だけで終わらない:恋のドキドキより、生活者のリアルを「言語化」してくるタイプ
鍵垢=感情の避難所という現代性:共感がSNS感覚で入ってくる
フェミニズムを「説教」ではなく、日常の会話・地雷・後悔として描く(作者インタビューでも制作意図の一端が語られている)
好みが分かれる点
“スカッと恋愛成就”を期待すると、むしろ現実のしんどさが増す(ただ、そのぶん誠実)
登場人物が痛い目を見る展開もあり、読むタイミングによっては重い
「無痛恋愛」って現実にも求められてる?(結論:求めはある。でも“恋愛不要”とは別)
まず「無痛恋愛」を現実に置き換えると
この作品の文脈での無痛は、「まったく痛みゼロ」ではなく、たぶん次の要素に近いです。
相手に雑に扱われない(尊重・境界線がある)
期待と不安でメンタルを削られない(連絡頻度や役割の押し付けが過剰じゃない)
“女だから” “男だから”の負担が少ない(暗黙のケア労働が固定化しない)
では、そういう恋愛を望む人は増えている?
調査を見ると、少なくとも 「恋愛=コスパ/タイパが悪い、面倒」という感覚は一定数あります。
内閣府系の調査紹介では、未婚で恋人がいない層のうち「恋人が欲しくない」37.6%、理由の最多が「恋愛が面倒」46.2%とされています。
20代の恋愛観では「結婚につながらない交際は無駄」「タイパ・コスパ重視」といった言い回しが調査・話題として出回っています。
また、若者の「デートする相手がいない」割合が高いという調査紹介もあり、恋愛が生活の優先順位で下がっている傾向が示されています。
ただし同時に、恋愛や結婚に価値を感じる人も多いのが現実です。こども家庭庁の意識調査では、未婚者の約6割が「結婚で精神的な安らぎ」や「恋愛・結婚が生活を充実させる」と答えています。
つまり、いま増えているのは
「恋愛いらない」一択というより、
「痛い恋愛はしたくない(=コストが高い関係は避けたい)」という条件付きの選別、に近いです。
作品が刺さる理由(現代の恋愛事情と接続)
仕事・生活が忙しいほど、恋愛に「学習コスト」「感情労働」を割きたくない
ハラスメントや炎上を避けたい時代で、言葉選びに神経を使う
結婚・出産後に負荷が偏る不安があり、最初から“痛みの芽”を消したい(うずらちゃん編がまさにそこを突く)
まとめ
『わたしたちは無痛恋愛がしたい』は、恋愛を「夢」ではなく、生活の中の交渉・境界線・尊厳の話として描く作品です。
“無痛”は、ただの「楽したい」ではなく、雑に扱われないこと/傷を当然にしないことの言い換えにも見えます。公式紹介にある通り、「痛みのない関係なんて可能か?」という問いを、恋愛だけでなく社会の構造ごと扱うのが、この漫画の強さです。


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